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「つみたてNISA」が盛り上がらない根本理由(東洋経済オンライン)

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●年40万円を上限に20年間(最大800万円)積み立てが可能でその運用益に対しては一切税金がかからない、など個人が資産形成をするにあたってはとてもお得な制度であるはずの「つみたてNISA」の口座受付状況があまり芳しくないのはなぜなのか、その根本理由を解説した記事です。

最大800万円投資しても非課税の「つみたてNISA」が盛り上がっていない。個人投資家にはお得な制度のはずだが、なぜなのか

1月から、いよいよ「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」が開始となった。既存のNISA(非課税投資枠が年間120万円まで)と併用はできないが、年40万円を上限に20年間(最大800万円)積み立てが可能で、その運用益に対しては一切税金がかからない。個人が資産形成をするにあたっては、とてもお得な制度のはずだ。ところが、すでに昨年10月に始まった口座受け付け状況は、あまり芳しくないと聞く。なぜなのか。多くの投資信託会社の中で、最もつみたてNISAを積極的に広めようとしているセゾン投信の中野晴啓社長に、つみたてNISAが今ひとつ盛り上がらない背景を聞いた。

投資信託会社の担当者たちの発言
昨年のことですが、つみたてNISAの商品登録受け付けが始まったころ、金融庁から「投信会社と投信ブロガーの情報交換会を行いますので、来てください」という連絡を受けました。声を掛けられたのは当社だけでなく、同じ独立系ではレオス・キャピタルワークス、それ以外では野村証券、大和証券、ニッセイアセットマネジメント、ブラックロックなどといった、いわゆるメジャーどころの投信担当者が集まっていたのですが、大勢の投信ブロガーを前にして突然、「では、つみたてNISAに対する意気込みを、1社につき5分間でスピーチしてください」と言われたのです。

何の事前予告もなかったので、出席していた各投資信託会社の担当者もびっくりしていましたが、全てではないものの、多くの会社がその場で言っていたのは、「つみたてNISAについては、採算度外視で(口座を増やすように)頑張ります」ということでした。

「採算度外視で……」という言葉が、各投資信託会社の担当者の口から出てくるあたり、つみたてNISAに対する思いが如実に表れています。つまり、「つみたてNISAをどんなに頑張ったとしても、儲からない」という意識が強いのです。

確かに、つみたてNISAの対象となる投資信託は、「ノーロード」といって購入時手数料を取らないものしか認められていません。また、信託報酬率も、個別の銘柄を重視する「アクティブ型」であっても、かなりの低率でなければなりません。

販売する金融機関にとってみれば、投資信託の購入時手数料も、信託報酬に含まれる代行手数料も、非常においしい収益源です。しかし、その両者が稼げないようなサービスには、なかなか力が入らないと思います。担当者たちの発言にもあったように、表向きは金融庁に対して「つみたてNISAを普及させるために頑張ります!」と言っても、ホンネは「こんな儲からないサービスなんて、やっていられない」という意識が強いのです。これでは普及などするはずがありません。

既存の金融機関は間違った投資信託の売り方をしてきた
金融庁は、顧客本位の立場になって、つみたてNISAをきちんと広げていけば、金融業界にとって大きなビジネスチャンスになると考えています。もちろん、私もそう思います。なぜなら、金融庁が唱えている「長期・分散・積立投資」こそ、セゾン投信の根源的な価値をなしているものだからです。しかも、つみたてNISAのスタートによって、長期・分散・積立投資に「税制優遇」というメリットも付加されました。結果、顧客にはこれまで以上にすばらしいサービスを提供できます。これをビジネスチャンスと言わずして、何と言えばよいのでしょうか。

でも、大半の既存金融機関の考え方は違うのです。なぜ、これだけ大きなビジネスチャンスを前にして、多くの金融機関はつみたてNISAを一所懸命に広めようとしないのか。その理由は簡単です。多くの金融機関はこれまで、長期・分散・積立投資を「全く」と言っていいほど、手掛けてこなかったからです。それとは真逆の「短期・集中・一括投資」を勧めてきたのが現実です。短期間でほかの投資信託に乗り換えさせることを前提にして、まとまった資金で、特定の投資信託を買わせて、多額の購入時手数料をいわば「かすめ取る」というのが、多くの販売金融機関がこれまで行ってきた投資信託のビジネスモデルです。

この手の販売方法で最も売られてきたのが、毎月分配型をはじめとする、定期分配型の投資信託です。「高い分配金が得られる」という謳い文句で、年金生活のお年寄りを中心に営業展開をし、一時は投資信託全体の純資産総額のうち7割程度を占めるまでになりました。しかし、低金利が続いたことで徐々に高額分配の支払いが困難になり、大半の毎月分配型投資信託は、分配金の引き下げを余儀なくされました。それにつれて投資信託全体の純資産総額に占める比率も、現在は5割程度にまで低下しています。

問題は、毎月分配型投資信託を解約した後、そのおカネがどこに流れているのか、ということです。もちろん、「つみたてNISAで長期・分散・積立投資をしましょう」というアドバイスなどしているはずもなく、インド株や、ロボティクス、AIなど、特定のテーマに投資する「テーマ型ファンド」を解約資金の受け皿にしていると思われます。

テーマ型ファンドの多くは年1~2回決算です。要するに既存金融機関の多くは、「毎月分配型投資信託は、金融庁が目の敵にしているからもう積極的に販売しない。でも、年1回決算の投資信託なら、何を売ってもいいでしょう」といわば開き直っているわけです。これも金融庁に対する金融機関の「面従腹背」を絵に描いたような構図です。

もし、毎月分配型投資信託の販売促進をやめて、年1回決算の投資信託に営業の中心をシフトさせたとしても、それは決して褒められるようなものではありません。なぜなら、毎月分配型投資信託を全額解約させ、結局は、それで生じた多額の解約資金をひとまとめにして、特定のテーマ型ファンド等に資金を移し替えさせようとしているからです。販売金融機関にとってはまたぞろ購入手数料が稼げて、目先の収益は上がります。しかしこの手の販売方法が横行しているかぎり、いつまで経っても、つみたてNISAの理念は定着しません。

正直なことを言えば、つみたてNISAは、2014年に始まり、ブームとなった「NISA」のときのような盛り上がりはないでしょうし、投資信託会社にとっても、また販売金融機関にとっても、その成果を実感するまでには、かなりの時間を要すると思います。

口座数と積立金額が増えたときの起爆力は強力だ
でも、つみたてNISAに真剣に取り組まない金融機関は、早晩、淘汰の対象になると思います。現在、個人金融資産の大半は60歳以上の高齢者に偏在しています。この人たちはいずれ、自分自身が満足に動けなくなったとき、これまで自分が築いた金融資産を取り崩し、生活費に充てるようになるはずです。結果、既存金融機関の顧客に占める最大のボリュームゾーンが、徐々に崩れていきます。

そうなったとき、自分たちの将来のために資産形成をしている若年層の顧客を持たない金融機関は、経営が成り立たなくなる現実に直面するはずです。特に今後、地方銀行はつみたてNISAに対する取り組みの真剣度合いが、同業他社を呑み込む側になれるのか、呑み込まれる側になるのかを左右する、重要な試金石になるでしょう。

つみたてNISAの積立限度額は、年間40万円、20年の積立期間で最大800万円であり、1口座あたりの資金量は決して大きくありません。しかし、数万口座、数十万口座というように、口座数と積立金額が増えたときの起爆力は、業界の勢力地図を塗り替えるほど強力なものなのです。その点を忘れるべきではないと思います。

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